特集パートナーズ・インタビュー
2018.03.29 
東郊住宅社の場合:「ここに住みたい!! 」の作り方。日常をデザインする不動産業【前編】

モクチン企画には、「パートナーズ会員」という地域密着型の不動産会社や工務店と提携するための仕組みがあります。個性的で面白い方々が集まるパートナーズ会員は、「モクチンレシピ」を日常的に使うヘビー・ユーザーです。この特集では、そんなパートナーズのみなさんへのインタビューをお届けします。何を大事に日々の仕事に取り組んでいるのか? モクチン企画と協働する狙いはなにか? みなさんの仕事とビジョンについて、お話を伺います。


第二回目のインタビュー相手は、神奈川県相模原市にある東郊住宅社、代表取締役の池田峰さんです。モクチン企画が法人化した直後からお付き合いのある最古参のパートナーの一社であり、モクチン企画も設計でお手伝いさせて頂いた入居者向け食堂「トーコーキッチン」の成功は業界内外でもよく知られています。不動産業の常識を覆す池田さんの描く未来は、「淵野辺の日常を豊かにしたい」という素朴で揺るぎない思いに支えられていました。



オークランドから淵野辺へ


モクチン企画 中村(以下M):まずは東郊住宅社についてお話いただけますか?

 

東郊住宅社 池田(以下T):東郊住宅社は、淵野辺周辺に1600室の賃貸物件を管理している地元密着型の不動産屋です。1976年に父が創業し、僕は2017年8月に後を継いだ二代目です。


うちの父は、1994年に「礼金ゼロ」っていう貸し方を開始して、2004年に「敷金、礼金、退室時修繕ゼロ」を全国に先駆けて始めました。当時は全国的にも珍しかったので事業の柱になっていたんですが、世の中に空室が増えてきたことで、他の会社もやり始めるようになってきました。その中で、新しい事業の柱を探していたところ生まれたのが「トーコーキッチン」です。


M:モクチン企画も内装のデザインをさせて頂いた入居者向け食堂ですね(インタビュー実施場所)。トーコーキッチンについてはのちほど詳しくお伺いするとして、次は池田さんご本人の来歴をお聞かせいただけますか?




T:僕自身は、広告業の出身です。最初はグラフィックデザインから始めて、国内の広告代理店に入り、そのあとニュージーランドに移住して、そこでも広告代理店の仕事をしていました。2012年に帰国して、東郊住宅社に入ったんです。


M:不動産屋さんにしてはめずらしい経歴ですよね。ちなみに、ニュージーランドのどちらにいらしたんですか?


T:オークランドに8年いました。いいところですよ。車で30分もいけば海も森あって、したいことがすぐにできるっていう、どちらか言うと田舎なんですけど(笑)


そこそこの都市文化を味わえるし、永住権も取ったのでずっと住むつもりだったんですが、いろいろ縁があって今の会社を継ぐことになりました。




M:海外での生活を経て、お父様の会社を継ぐことになったということですが、モクチン企画を知ったきっかけは、どのようなものだったのでしょうか?


T:モクチン企画を知ったのはニュージーランド時代です。会社を継ぐという話が出たとき、古くなっていく建物をどうするか社内で話題になっていることを知りました。


実は2001年に、当時一人暮らししていた部屋をDIYしたり、平屋を改修したりしていて、自分自身としても古い建物を活用することの可能性を感じていたんです。それでネットを検索していたら、たまたま学生団体時代のモクチン企画のブログをみつけて、面白いことをやってる人たちがいるなと思いました。


ちょうど自分も帰国した2012年のタイミングでモクチン企画が法人化したことを知り、パートナーになろうと思い連絡したんです。その年には協働を開始しました。



コンセプトを具現化する、モクチンレシピの真骨頂




M:法人化前の段階から見つけていただいていたんですね!そうするともう5年以上の関係になるわけですが、モクチン企画との協働の中で、印象に残っているプロジェクトはありますか?


T:そうですね。いろいろ印象に残っているのですが、お互いに探りながら始めた最初のプロジェクトが、やはり一番印象に残っています。


当時、淵野辺にある青山学院大学の通学生が、キャンパスの「渋谷回帰」で1万人から3千人に減るということが起こりました。普通に考えると、マーケットが小さくなったのだから、まず家賃を下げるという発想になります。けれどそうはせずに、新しいマーケットを作ればいいじゃないかと思ったんです。現状の淵野辺にないものを作り、外から人を呼ぶことにしました。


そこで「都内でオシャレなリノベ物件に住みたいけど、ちょっと通勤に時間が掛かっても良いから、リーズナブルな部屋を希望する人」をターゲットにしたんです。そのうえでレシピで改修を実施したら、入居を決めたのは都内勤務の20代半ばの女性でした。生まれて初めて「淵野辺」という駅で降りて、その1時間後に申し込みを決意してくれた。申し込みのあと、「ちなみにスーパーってどこですか?」って聞かれたんですよ(笑)


M:普通の物件探しでは駅からの距離やコンビニ・スーパーの有無をまず確かめますから、順番が逆ですね(笑)しかも初めて訪れたまち...


T:それこそが狙いでした。相対的な評価ではなく、「ここに住みたい!」という絶対的な評価で選ばれること。それが一番最初の案件で実現できたので、とても印象に残っています。




T:他には、築40年の物件の話もありますね。建物の状態が悪くなっていたので、原状回復するのも、フルリノベーションするのも同じくらいのお金が掛かるということがわかった。そこでただリノベーションするんじゃなく、シングルマザーと新婚さんをターゲットにしたんですね。そうしたことを意識しながらレシピで改修をして募集をかけたら、数日後に、わずか1時間差でシングルマザー2組から連絡がくるという成果がありました。


M:まさに狙い通りですね。


T:僕が考えるモクチンレシピの「真骨頂」というのは、こちらの考えたコンセプトを実際の改修を通して具現化してくれることなんです。素人がやると、とっ散らかっちゃうようなことあると思うんですけど、誰にでも分かりやすく「レシピ」という形でまとめて、簡単に再現できるように落とし込んだところが、本当に「発明」だと思います。


M:ありがとうございます。レシピをそのように使いこなして頂けているのは、本当に嬉しい限りです!さて、ここからはそうした幾つかのプロジェクトを経て生まれた、このトーコーキッチンについてお伺いしたいと思います。

→ 後編へ続く。「入居者向け食堂」トーコキッチンができるまで。そしてモクチン企画の担った役割とは?




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