東郊住宅社の場合:「ここに住みたい!! 」の作り方。日常をデザインする不動産業【後編】

モクチン企画には、「パートナーズ会員」という地域密着型の不動産会社や工務店と提携するための仕組みがあります。個性的で面白い方々が集まるパートナーズ会員は、「モクチンレシピ」を日常的に使うヘビー・ユーザーです。この特集では、そんなパートナーズのみなさんへのインタビューをお届けします。何を大事に日々の仕事に取り組んでいるのか? モクチン企画と協働する狙いはなにか? みなさんの仕事とビジョンについて、お話を伺います。


第二回目のインタビュー相手は、神奈川県相模原市にある東郊住宅社、代表取締役の池田峰さんです。モクチン企画が法人化した直後からお付き合いのある最古参のパートナーの一社であり、モクチン企画も設計でお手伝いさせて頂いた入居者向け食堂「トーコーキッチン」の成功は業界内外でもよく知られています。不動産業の常識を覆す池田さんの描く未来は、「淵野辺の日常を豊かにしたい」という素朴で揺るぎない思いに支えられていました。

※この記事の前編はこちら


photo: kentahasegawa



入居者向け食堂サービス「トーコーキッチン」



M:ありがとうございます。レシピをそのように使いこなして頂けているのは、本当に嬉しい限りです。さて、ここからはトーコーキッチンについてお伺いしたいと思います。不動産屋が食堂を始めるなんて前代未聞ですが、2016年に受賞されたグッドデザイン賞の紹介ページにはこう書かれていますね。


トーコーキッチンは、東郊住宅社が淵野辺駅周辺で管理する1600室の賃貸物件で採用しているカードキーでのみ開くドアが設置された食堂で、カードキー所有者(管理物件入居者・管理物件オーナー・協力関係会社・当社社員)とその同行者が利用対象となる「入居者向け食堂」である。入居者サービスの一環として自社で運営し、入居者に利便性と健康的な食生活を提供することを第一の目的とする。メニューは朝食100円、昼食・夕食500円の手づくり日替わり定食を中心に、いずれもリーズナブルな価格に設定。地場食品の採用、近隣商店からの仕入れ、入居者の雇用、畑を持つ物件オーナーから寄せられる旬の味覚のお裾分けなども可能な限り行う。


今日も学生さんが何人も出入りされていますが、ここは単なる食堂を超えて、地域にしっかりと根を張っているんだなと実感します。こうした実践がビジネスとして成立しているというのは殆ど聞きませんし、ましてや体質が古いといわれる不動産業界から出たと考えると、本当に稀有なことだと思います。そんな「入居者向け食堂サービス」というアイデアにたどり着かれたのは、どのような経緯だったのでしょうか。


T:3つの元となる考えがありました。1つは、学生が部屋探しをするときに、「食事付の学生マンション」にするか「一般物件」にするか、比較検討する率が増加傾向にあったということ。




2つ目は、すべての部屋をリノベーションしないで済む方法を考えたかったこと。リノベーションは特効薬ではあるけど、万能薬ではない。リノベーションに依存せず、一つの方法で、すべての部屋を満室にできるような裏技を考えたいと思っていました。


それから、3つ目は他社との差別化の柱を探していたこと。もともとは、借主と貸主の対等な関係を築いていきたいという信念で敷礼金ゼロを始めたのが、他社も空室対策から敷礼金ゼロをうたようになって、数字上は変わらなくなってしまったことです。すると、うちの信念やオーナーさんの思いが消えてしまう...。


こうしたことをバラバラと考えていたときに、2014年の忘年会でふと思ったんです。「あ!うちが食堂をやったらいんじゃないか!」って(笑)


M:ひらめいちゃったんですね(笑)


T:それで実際に動き出して、2015年12月27日にオープンしました。モクチン企画の連さんには、結構早い段階から相談をさせていただきましたね。




M:トーコーキッチンを立ち上げて2年が経ちますが、どのような変化がありましたか?


T:まずここに来てもらえれば、「東郊住宅社がどんな会社なのか」を分かってもらえるようになりました。言わなくても分かってくれるというか、ガラス張りで中の様子が見えますし、店内から店外へ東郊住宅社のロゴをイメージしたタイルが伸びていて、まちとつながってる雰囲気が伝わってきたり。そういった、みんなが「体感」することで、僕たちの会社の雰囲気や理念を理解できるということは、今までなかったと思います。


M:モクチン企画とデザイン案を作っていくプロセスはいかがでしたか?


T:めちゃめちゃ楽しかった!僕はあんまり過去を振り返るタイプではないんだけど、あれは本当に楽しかった(笑) 例えば、このタイル一つとってみても、並べ方によって全然違う雰囲気になるとか。それを夜中に何パターンも試行錯誤したりして。思ったことができなかったとしても、「せっかくだから別の方法でやってみよう」とか、そういう積み重ねがとにかく面白くってね。僕がやりたいと思っていたことを、モクチン企画が理解してくれていたから、それをカタチにしていくのが楽しかったんだと思う。


他にもデザインする人だったり、改修する人はたくさんいるかも知れないけど、今考えてみても、ここまでプロジェクトとして完成度を高められるのは、モクチン企画しかいなかったと思うな。オシャレにしたり、安く仕上げたりすることって誰でもできるけど、僕という人間を理解した上で、一緒に歩んでくれたことが一番大きかった。





一人一人の入居者の笑顔を、ふやしていくこと


M:最後に、東郊住宅社の今後の展望をお伺いできますか?


T:よく聞かれるんですけど、愚直に「一人一人の入居者の笑顔をふやしていくこと」に注力していきたいですね。みなさんの笑顔を獲得し続けられるような努力を、仕事としてやっていく。本当に大きなテーマとしてはそれだけです。


それから、実はもう一つ別のプロジェクトを企んでいます(笑)。こちらもトーコーキッチン立ち上げの頃から考えてはいたのですが、今後少しずつ進めていくつもりです。


現在の東郊住宅社は、手を入れるべき空室がない状態になっていまして、レシピによる改修はあまりできていないのが現状です...。それでも、まだまだモクチン企画と仕事が続いていくという展望はあります。なぜかというと、今の不動産業界に足りないのは「クリエイティビティ」だと思っているからです。かつてのシステムに頼っていたところを変えていける、ゼロからイチを一緒に作っていけるモクチン企画のようなパートナーの存在は財産だと思っています。


モクチン企画は、モクチンレシピを使った改修から、コンセプトの具現化まで、実はやれることの範囲が広いですよね。こちらの状況に応じて付き合い方を変えられるのは、とてもありがたく、心強いです。


M:お互いにとってよいパートナーであれるというのは、モクチン企画としても一番うれしいことです。これからも池田さんのコンセプトを具現化させるようなプロジェクトを、一緒に実現することができればと思っています。本日はどうも、ありがとうございました!



トーコーキッチンの食事。栄養バランスの良い食事をリーズナブルに頂ける。



インタビューを終えて


「不動産屋が経営する入居者向け食堂」と書くと、どこか突拍子もなく見えるトーコーキッチン。しかし行くたび驚かされるのは、そこに流れる落ち着いた時間です。食堂にはまちの方々が次々に訪れ、池田さんは楽しそうに接されています。トーコーキッチンは入居者の、そして池田さんの生活の一部になっているのでしょう。


いつも感じるのは、「淵野辺の日常にワクワクしたい!!」という池田さんご本人の思いです。「食堂」という斬新なアイデアは、まちの一員としての目線を忘れないからこそ、むしろ自然に生まれたのかもしれません。


こうした池田さんの姿勢から、モクチン企画はたくさんの気づきを頂いています。淵野辺の日常を作る池田さんの挑戦を、これからもお手伝いしていきたいと思います。




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