「リノベーション図鑑」では、モクチン企画が行った物件改修のポイントを解説しています。今回は、築年数がかなり経過した古い戸建て物件を、最小限の手数で魅力的に改修した事例をお届けします。戸建て物件のような面積の大きい物件の場合、建物全体に手を入れようとすると、どうしてもコストが積み上がってしまいます。しかし、物件の状態をよく観察して適材適所に「モクチンレシピ」を使っていくことで、効果的に改修を行うことができます。
今回の物件は郊外の住宅街にある築古の一戸建です。基本的な設備や表装などに極端な劣化や傷みはなく、手を入れずにこのまま貸すこともできなくはない状態です。とはいえ、やはりこのままでは相場よりも低い家賃設定にしないと、借り手はつかないだろうという状況でした。
百聞は一見にしかず。早速、そんな物件の様子を見てみましょう。
まずは玄関を入ってすぐにある居間スペースです。手前が6帖の和室となっており、奥には3帖ほどのサービスルームがあります。板張りの天井・壁や暗めの色合いの砂壁が相まって、全体的にくすんだ、暗い印象になってしまっていました。また写真左手の開き戸の襖紙は破れてしまっているなど、劣化もみられました。
[一階居間]
全体に板張りで、床もフローリングなので少々重苦しい印象です。
[一階サービスルーム]
奥に進むとこじんまりとしたキッチン/ダイニングスペースがあります。
こちらもサービスルームと同じように板張りの内装です。また照明器具はかなり古いものがそのまま取り付けられていました。
[一階ダイニング/廊下]
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続いて2階にあがると、2間続きの10帖ほどの部屋が広がっています。こちらも一階と同じように板張り天井+土壁といった構成ですが、一階に比べて日当たりがよく間取りも開放的なため、あまり薄暗い印象は感じません。また雪見障子のような凝った造作の建具もついており、全体的に好印象でした。
[二階居間]
二階の居室とベランダの中間領域の廊下のようなスペースです。
こちらも明るく、特に目立った汚れ、傷みなどもありません。サンルームのようなスペースとしても活用できそうです。
[二階廊下]
以上、改修前の状態をお伝えしてきました。築古の物件によくあるケースですが、室内を構成する床材・建具・照明といったパーツ群に統一感がなく、基本的にごちゃごちゃとした印象が見受けられます。
しかしどんなに改修しても、新築のようにピカピカになる訳ではありません。むしろ古い部分も全てが悪いわけではなく、物件の味になるような魅力的な箇所は必ずあります。よく観察して、ポイントを絞って改修することが重要です。
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では、この築古物件がどのように変わったのでしょうか?
早速改修事後の様子をみていきましょう。
[一階居間]
いかがでしょうか?
薄暗い印象だった居間が、明るくすっきりとした印象に変わりました。
ここでは「ざっくりフロア」「ぱきっと新壁」「シャイニングふすま」「のっぺりフロア」「チーム銀色」「ライティングレール」などのレシピを使っています。
全体の色味が減り、シンプルにまとまることで、既存部分の木造ならではの雰囲気が引き立つ結果になりました。
また全体の予算の関係上、大きく印象を変えられるような改修が可能な箇所は限られています。そこでこの物件のでは、リビングスペースに集中的に投資しました。
なお今回の改修では「チーム銀色」と「シャイニングふすま」のふたつを改修のポイントとなるレシピとして用いました。レシピ紹介ページの方もぜひチェックしてみてください。
[一階サービスルーム]
奥のサービスルームの様子です。
こちらも板張りの壁はそのままですが、建具を「シャイニングふすま」、床を「のっぺりフロア」に変えることで、主張の強い板張り壁とのバランスをとりました。
また照明器具も「チーム銀色」を使いシルバー系にまとめることで、シンプルに揃えました。
[一階居間・廊下]
ダイニング側から見た写真です。リビングを中心的に改修することで、既存の廊下部分とのメリハリが生まれています。廊下部分写真右手の建具はは「シャイニングふすま」を使いリニューアルしていますが、それ以外の天井・壁・床などの部分はすべて既存を再利用しています。
[一階ダイニング]
ダイニングは照明器具を「チーム銀色」でリニューアルしています。
[二階居間]
二階は元々の状態が良かったので、畳の表替えをした上で、「チーム銀色」を使って照明、パーツ交換などの最小限の操作をするだけに留めています。
意外と重要なのが、畳の表替えの際に畳のヘリの柄や色を意識して選ぶことです。施工業者におまかせにしてしまうと、部屋の雰囲気とは合わない和柄物になってしまうことが多いのですが、それがいわゆる古い和室の感じを生み出してしまいます。
作りたい部屋のイメージが固まっているのであれば、それに合わせて決めてあげることが必要です。モクチン企画では基本的に無地の紺色を使うことが多いです。
[二階廊下]
こちらもアクセントとして「シャイニングふすま」を使っているのみですが、引き締まったシャープな印象に変わりました。またこの物件はサッシ関係がシルバー系の色味だったので「チーム銀色」や「シャイニングふすま」とも相性が良かったです。
現地調査時には、そういった細かい部分も意識的に見ながらバランスをとることで、より改修の精度が上がります。
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かくして、部分的な改修を組み合わせることで、戸建てのような面積の大きい物件でもコストを抑えながら魅力的に改修することができました。
「アパート改修デザイン講座」や「モクチンスクール報告書」では具体的な物件の物件の分析方法やレシピの組み合わせ方を学ぶ事ができます。こちらもぜひ参考にしてみてください。
では!
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