本特集では、これまでモクチン企画が培ってきた物件改修のノウハウを丸ごと学ぶことができる講座、「モクチンスクール」の開校に向け、既存のパートナーズ会員を対象に実施している「試験版スクール」の様子をレポートしています。
これまで、物件の分析手法、和室タイプの改修、洋室タイプの改修、不動産最先端学、という順番でスクールを続けてまいりましたが、第五回となる今回は少し毛色を変えて、「外構の改修」と「自社事業のSWOT分析」の二本立てです。
まずは「外構」から。どんなに部屋の内部に手を加えたとしても、塀や玄関といった外から見える部分や、建物全体の見た目、すなわち外構の印象が古いままでは、せっかくの改修が片手落ちになってしまいます。とはいえ外構の改修は実際にやってみないとわかないことが多く、難易度が高いものです。そこで外構を改修する上で重要となる、「印象を変える」「居場所をつくる」「関係を調整する」といった幾つかのポイントをレクチャーしました。
例えば、多くの木造賃貸アパートに見られるじめっとした灰色の外壁が、これが明るい白に変わるだけでも、物件に対する印象はまったく違ってきます。また一口に白といっても様々な種類があるので具体的にどの塗料を使ったよいのか、レシピと合わせて解説しました。
また、一般的にあまり人気がないとされる1階の部屋については、部屋の内装の延長のようなウッドデッキを作ることで使い方に幅がでるようにしたり、古くなったブッロク塀を撤去することで建物の印象を変え、防災面での性能も高めるるといった改修の工夫を、事例写真と共に受講生に伝えました。
木造賃貸アパートはその歴史的な成り立ちから、まちとの距離感が非常に近いという特徴を持っています。そのため外構の改修においては、お寺の借景のように周辺環境の良い部分を引き込むことで、入居者にとって心地よい環境を作ることが可能なのです。
さらに、単に外壁をキレイにするというような改修以上の方法についても紹介しました。例えば壁だったところを光の通るガラス戸に変えて、機能や印象だけでなく、部屋と外との関係まで変えた「ピン!ひらはらばし」の事例が恒例です。アイデアの組み合わせによって、今までなかった新しい価値を作りだすことがモクチンレシピの醍醐味と言えます。
その一方で、関係性を調整するということは、近隣住民の視線などのさまざまな外的要因に対する熟慮を必要とします。実際の事例も交えながら、受講生とレシピのメリットについて話し合う有意義な時間を持つことができました。
後半は、スクール受講生による自社事業のSWOT分析ワークショップです。SWOT分析はよく知られた事業分析の手法ですが、今回の目的はそれぞれの会社の事業分析を元に、モクチンレシピを実際に使えそうな業務内容のあたりをつけるところにあります。ここまで長い時間をかけて学んできたモクチンレシピのノウハウを、どのように現場に持ち込めるかまでを一緒に考えてゆきます。
まずは、それぞれの会社が持つ強み (Strengths)と弱み (Weaknesses)、また業界動向やカバーしている地域が持つ機会 (Opportunities)と脅威 (Threats) をリストアップしてみます。さらにこの四つのカテゴリーをもとに、レシピを元により強化していくべき仕事、レシピによって改善されるべき問題点、レシピによって新規開発されるべき事業、などを洗い出して行きます。
モクチンレシピを用いた事業改善のイメージが固まってきたら、自分たちが明日から変化を起こすために行う「アクション・プラン」にまとめて行きます。自分の言葉でやるべきこと、やらないといけないことを書き出すことで、スクールでの学びをただ受け身に聞いただけでは終わらせず、日々の業務に直接活かしてもらうことを期待しています。
最後は受講生それぞれが、自らのSWOT分析を元にした気づきや学び、レシピ導入のためのアクションプランについて共有とディスカッションを行いました。それぞれ規模や事業に差はあっても、自分たち自身を相対化して客観視することのできる良い機会になったのではと思います。
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さて、次回のスクールレポート最終回は、改修した物件の流通チャンネルについて、そして意外とおろそかになりがちな写真撮影のレクチャーです。次回のレポートもお楽しみに!
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