特集モクチンスクール
2017.11.23 
最先端を学ぶ!スクール第四回『不動産最先端学』

本特集では、これまでモクチン企画が培ってきた物件改修のノウハウを丸ごと学ぶことができる講座、「モクチンスクール」の開校に向け、既存のパートナーズ会員を対象に実施している「試験版スクール」の様子をレポートしています。


第四回となる今回は、これまでの内容とは打って変わって、「まちの魅力を生み出す不動産業の現場」と題した外部講師によるスペシャルレクチャーです。激変の不動産業界において、これまでの常識に囚われることなく物件や周辺エリアの価値を向上させていくビジョンやノウハウについて学び、視野を広くする狙いがあります。


居室のカードキーでつながる入居者向け食堂「トーコーキッチン」


まず一人目のゲストは、有限会社東郊住宅社の代表池田峰さん。「トーコーキッチン」を中心とした、同社のユニークな取り組みについてお話して頂きました。


東郊住宅社は、40年にわたって相模原の淵野辺駅周辺の賃貸住宅を管理している、地域密着型の不動産会社です。トーコーキッチンは二代目の池田さんになってからスタートし、食堂の改修にはモクチン企画が携わっています。この食堂では、朝食100円、昼食夕食500円という低価格で提供されていますが、食材や栄養バランスを考えた日々のメニューは絶品です。そしてなにより、池田さん自ら食堂を頻繁に訪れ、入居者との日常的なコミュニケーションを欠かさないのが人気の秘訣です。




また、入居者は自分の部屋のカードキーを使って食堂に入ることができるという、他にはない独自の空間利用をおこなっているのが最大の特長と言えます。引っ越しをしてきた新規の入居者が、カードキーを手にしたときに叫んだというツイッターの投稿や、入居者の学生が食堂を自慢するために友人を連れてくるといった、一般的な不動産管理業務にはない、人間味にあふれたエピソードが多く出てきました。




また、面白いエピソードだけでなく、安価な料理を提供することで、食堂の収益はどうなっているのか?オープンしたあとにどのような反響があったのか?住み替え防止の視点など、数字として見えてきた効果についても後半でお話がありました。トーコーキッチンで繰り広げられる、紋切り方ではない「ざらざらしたコミュニケーション」の積み重ねが、利用者、入居者、物件オーナー、そして周辺地域に多くのメリットをもたらしていることが伺える内容でした。



松戸のまちをエリアブランディングする「MADCity」


続いてのゲストは、株式会社まちづクリエイティブの取締役でクリエイティブディレクターの小田雄太さんです。MADCityは2010年にスタートした、松戸駅を中心とする半径500メートル圏を対象とする民間のまちづくりプロジェクトで、物件のDIY改修やクリエイティブ層の誘致に特に力を入れています。




もともと松戸というまちが持っていたポテンシャルを引き出すため、エリアの歴史や成り立ちを丁寧に読み解いた独自のリサーチに基づく知見や、アーティストなどの創造的な人材を呼び込むことでエリアをブランディングしてゆくことのポイントなど、MADCityという実践に裏打ちされた情報が紹介されました。デザイナーである小田さんならではの、ブランドとロゴについての話も交えながらレクチャーが展開されていきます。




物件の改修や公共空間のリノベーションについても、参加者の興味をそそるような具体例が複数出てきましたが、「どうやったか?」よりも「なぜやったか?」といった発想の部分がフォーカスされている内容でした。行政や自治会と連携をしながらも、補助金・助成金に頼らず稼いでいくことの重要性などを鋭く説いて頂きました。




また、松戸に限らず、埼玉県戸田市でJR東日本と連携している新たな活動、『SAI-KYO DIALOGUE LINE』も紹介され、地元戸田で建設・不動産業を営む参加者からは感激の声が挙がりました。


トーコーキッチンと同じように、後半部分は物件の稼働率や入居者の内訳、ビジネススキームなど、数字を出しながら、地域に対してどれだけの効果をもたらしたのかを詳しくレクチャーして頂きました。



参加者からの質問とクロストーク


お二人のレクチャーと休憩を挟んでからは、参加者からの質問に応えながらのクロストークの時間です。挙手だとなかなか質問がしづらいこともあるため、質問事項を予めポストイットに書いて、それをモクチン企画の連から発表していく方式にしました。




お二人のまちづくりと不動産ビジネスに関するスタンスの共通点、あるいは相違点はどこにあるのか、また個々の業務フローまで、多くの質問が集まりました。普段、不動産業に携わっている参加者にとっては、大きな関心事だったようです。




レクチャーよりもざっくばらんとした雰囲気で、池田さんからは、偶然発見されたカードキー共通のパターンなどの逸話や、苦労された点なども語って頂きました。また、小田さんからは、まちづくりはすぐには結果がでないことや、「コミュニティ(共同体)」と「アソシエーション(組織)」を分けて考えることなどのポイントをお話頂きました。




最後はワークシートの時間です。レクチャーの前に、自社の強みと弱みを分析する時間を取り、それぞれの点について、ゲストのお二人がどのうように実践しているのかを記入する形式を取りました。またその上で、日々の改善のためのアクションと、何から始めるのかを考えます。シートには、参加者の学びやアクションがたくさん書き込まれおり、インプットと同時にアウトプットもきちんと形にできた回となりました。


第五回は、建物の外側の改修「外構」についてのレクチャーになります。次回のレポートもお楽しみに!


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