特集パートナーズ・インタビュー
2025.05.03 
目の前の売上よりも、お客様との長い伴走を大事にするからできる仕事がある。まちなかデベロッパーFUTATABI島尻さんの仕事の軸。

2024年9月にパートナーズに参画された株式会社FUTATABI代表の島尻さん。お客様と信頼関係を構築することを大事にしながら、自分自身も共感して伴走できる仕事を手がけられています。「やりたい仕事」を続けていくためには、どのような努力や工夫をされているのか、お話を伺いました。今CHArと進めているプロジェクトのご紹介とあわせて、ご覧ください。


不動産業界で感じた違和感から、自分が大事にしたい仕事のスタンスが見えてきた


CHAr 米田:

島尻さんの自己紹介と、株式会社FUTATABIについて教えてください。


FUTATABI 島尻:

FUTATABIは川崎市多摩区の登戸に拠点を置く不動産会社で、2022年に創業しました。不動産活用や相続対策に関する企画業務、不動産売買、管理のご提案を中心に事業を行っています。

私は大学卒業後10年間不動産業界に勤務しました。学生時代は強い将来像を持っていたわけではなく、生きていく中で生活に直結する領域というイメージで選んだ業界でした。

働き始めて暫くして、将来的には独立したいと思うようになったのですが、まずは会社員として学べる事を吸収しようと思い、規模や業務内容が異なる複数の会社で不動産業務の経験を積み、33歳で独立しました。

社名には、単発的な取引や関係性ではなく、「また(再び)相談したい、取引したい」と思ってもらえる仕事を通じて信頼関係を構築したいという想いを込めました。お客様に伴走しながら課題解決や理想実現を実施すること、単なる商品やサービスの提供ではなく、お客様の課題や理想を本質的に理解し、共に解決策を考えながらサポートすることを大切にしています。


不動産業界というのは、事業者の利益とお客様の利益が相反する提案が当然のようになされていたり、事業者側が自社の利益を優先することも多い業界だと感じています。そういった仕事への違和感がぬぐえず、お客様と同じ方向を向いて、お互いの利益に対して伴走するようなスタンスで働きたいと思うようになりました。

不動産の相談一つ取ってみても、売買の契約や建築受注に繋げるために行っている、というのが業界での一般的な捉えられ方なのではないかと思います。しかしながらお客様の本質的な課題や地域のことを考えると、大事な要素はそれだけではありません。一部だけを見ていてはだめだと思い、相続やそれに伴う周辺業界の知識、地域に対する不動産活用の企画についてなど様々な分野の勉強をはじめました。扱う領域が広がったことでの負荷はもちろんありますが、簡単なことは誰にでもできることです。難しいことだからこそ自分が頑張る意味があるのだと思って、学び続けています。


米田:

素敵な理念ですね。ただ、そのような理想を大事にしながら、ビジネスとして持続していけるのだろうか、というような不安はなかったですか?


島尻:

ご相談に来て下さるお客様の中でも、スタンスが合っていると感じられる方のみとご一緒させて頂くことが、長い目で見てビジネスの継続という意味でも大切だと思っています。例えば、売買のご相談にあたって弊社手数料の割引に強いご希望を持っているお客様には、お断りをさせていただくこともありました。私は、報酬はきちんと頂いた上で、それ以上の価値をお客様に提供する、ということを大事にしているので。目の前の売上のことを考えると喉から手が出るほどお引き受けしたかったのですが(笑)、自分のスタンスと異なると感じたお仕事を受けると後からトラブルになります。最初の段階でのスタンス確認は、お互いに満足してご一緒するために大切なことだと感じています。


取引に関わった物件



まちなかデベロッパーの理念を一緒に広げていきたい想いでパートナーズに参画

米田:

自分たちがまず、スタンスを明確にして毅然とした態度をとるということ、勉強になります。

CHArのことは、どのように知っていただいたのでしょうか?


島尻:

川崎市で開催されたセミナーで、連さんが登壇されていた話を聞いたのがきっかけでした。主に大家さんに向けた築古物件の活用に関するセミナーだったと思います。

不動産と建築って、近い領域なのに隔たりがあるんですよね。不動産活用の視点だと、建築物が完成した瞬間がピークになってしまうのはダメで、その先実際に運営や活用されていくことこそが大事です。でも建築の人って、プロジェクトを作品として捉えていて、その後の視点を持たない方が多いなと。正直に言うとこれまであまりよいイメージを持てていなかったんです。

連さんは、不動産運用の収支、オーナーの気持ち、地域への関わり方など、つくって終わりではなくて、作ったものがどう成長していくのか、ということをすごく考えられていることに衝撃を受けました。すぐにモクチンメソッドの本を読みました。その後パートナーズネクスト(2024年6月に実施したイベント)に参加し、あらいさんや川瀬さんとお話しして具体的なプロジェクトでご一緒できそうな可能性も感じて参画した、という流れでした。


米田:

まちなかデベロッパーについてももちろんですが、CHArが建築において大事にしていることにも共感いただいて嬉しいです。


島尻:

建築の専門家だけでなく、あらいさんみたいな企画専門の方も事務所にいる建築事務所ってユニークですよね?


CHArあらい:

大手だと社内に企画やグラフィック専門のメンバーがいる会社もいますが、それは扱う建築プロジェクトの案件規模が違うからできることでもあり、CHArのプロジェクト規模、例えば築古の空き家改修、というような案件に対して1件1件に企画をつけることはなかなか難しいと思います。私たちはパートナーズというスキームで動いていて、パートナーズが十数社いると、その中で共通する考え方をメソッド化して共有することができるので、自分のような企画の人間もいることができています。

地域の不動産会社さんが扱うのは、メディアに載るような大規模で先進的なプロジェクトではなく、まちに多くある普通のアパートや空き家がほとんどだと思います。CHArも、そういった物件に向き合って生かしていくことが大事だと考えているので、それができるスキームを組んで、島尻さんのような不動産会社のみなさんと一緒にやっていきたい、と思っています。


島尻:

パートナーズに加盟した背景として、CHArが目指す事業の本質に、私自身とても共感したということがありました。もちろんプロジェクトを協業して進めることもやっていきたいですが、CHArへの応援・協賛、という感覚もあります。私自身も自分のプロジェクトの発展でそれに寄与していきたいし、CHArの掲げているような考えがもっと世の中に広まったらいいよね、と思っています。一緒に頑張りましょう、頑張ってください、という感じです。


FUTATABI島尻さん(中央)、CHArの川瀬、あらい。CHArのオフィスにて。


オーナー自身も明確にできていない希望を、伴走しながら具現化したい


米田:

「まちなかデベロッパー」として、今後行っていきたいことを教えてください。


島尻:

まずは、いまCHArに相談しているプロジェクトを形にしていきたいです。このプロジェクトは、目黒区にあるシェアハウスを運営しているオーナーさんからの相談で始まったものです。ご自宅と隣接するシェアハウスとを賃貸併用住宅として建替えをするにあたり、今の物件で営まれている人々の交流やイベントなどを継承していきたい、という思いをお持ちでした。先に他のハウスメーカーや不動産会社にも相談をしたそうですがハード中心の提案で、どういった交流や価値が生まれるか、ということに関心があるオーナーさんはしっくりくる提案に出会うことができていませんでした。

とはいえオーナーさんご自身も、何をどうすればよいのか明確にわかっていなかった状態でしたので、私は、オーナーさんの実現したいことや課題を伺いながら、CHArの皆さんも巻き込みながら提案をしていきました。物件でどんな営みがなされるか、そしてどうやって入居者さんや物件に関わる人たちに対し価値をつくっていくか、などイメージを具体化しながらお話を進めています。このオーナーさんの想いを実現する設計や運用を、CHArとも連携しながら実現していきたいですね。

このプロジェクトも含め、今後もいわゆる普通の不動産会社ではできないような提案や課題解決を行いたいです。単に物件を建てる、改修する、入居者募集をする、ということだけだったら私ではなくてもできます。折角なら、まちなかデベロッパーの理念に近いような、まちに住んだり働いたり遊んだりしている人たちが豊かさを感じるような企画をしていきたいと思っています。



あらい:

CHArとして、個別プロジェクトはもちろんですが、まちなかデベロッパーの動きも盛り上げていきたいと思っています。島尻さんから見て、こんなことをしたらよいのでは、というご提案はありますか?


島尻:

私はFUTATABIを創業する前に、地域や街という文脈から不動産の企画を考える会社にいたことがあるので「まちなかデベロッパー」という単語や提案している理念が比較的スムーズに頭に入ってきましたが、多くのまちの不動産会社はそうではないと思います。一方で、自社の管理物件やオーナーさんに対して何かできないかを真剣に考え、方法がわからなくて悩んでいる会社は、たくさんいると思います。そういう方々には、とにかく具体的な事例を届けていくことがよいのではないでしょうか。「今困っているオーナーさんと似たような事例を、こんな形で解決したんだ」と感じてもらうことができれば、そこから繋がれると思います。


あらい:

ありがとうございます。プロジェクト実績を作っていくことと、具体事例と共にまちなかデベロッパーの考えを広げていくこと、注力していきますので、引き続きよろしくお願いします。




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