特集パートナーズ・インタビュー
2024.09.27 
不動産業界の「普通はこうする」に囚われない パートナーズNEXTより、トダくらし不動産の取り組みご紹介【前編】

CHArが主催する、年に一度の不動産会社向けイベント「パートナーズNEXT」。2回目となる今年は、 〜地域価値を創る不動産会社「まちなかデベロッパー」を目指せ!〜というテーマで、6月14・15日に開催しました。パートナーズ会員にも、「まちなかデベロッパー」としてのプロジェクト事例をプレゼンテーションいただきました。


本記事ではそのなかで、平和建設株式会社 トダくらし不動産代表 河邉政明氏に発表いただいた内容をご紹介します。平和建設では物件だけでなく、まちに住まう人とくらしに焦点をあてた事業を様々行ってきました。そういった取り組みが更に伝わるようにと、今年屋号を変更し、WEBやパンフレットのリブランディングも行いました。リブランディングプロジェクトでは、CHArもパートナーズの枠組みで、企画立ち上げからクリエイティブディレクションまで伴走サポートさせていただきました。


ここからは河邉さんの言葉でお届けします。

「日本一敷居の低い不動産屋」を目指して

私は平和建設という会社の2代目になります。社名に建設と入っていますが創業以来建物を建てることは行っておらず、不動産の賃貸、売買、管理、仲介などを40年近く行っている不動産会社です。パートさん含めて総勢5人のまちの小さな不動産屋になります。店頭でアイスキャンディを売っており、放課後になると小学生がアイスを買いにくる行列が見られます。100円で入れる日本一敷居の低い不動産屋を自負してます。(笑)

こんな子供たちが毎日何組も来る。自転車置き場が埋まってしまうことも(河邉さんの資料より

事務所は埼玉県戸田市にあります。東京の板橋のすぐ隣で、お預かりしている物件の多くは事務所から半径2キロぐらいに集中しています。ベッドタウンと呼ばれるような、大きな特徴のないまちです。


まちや人の流れに目を向けて考えた、物件の活かし方

自分たちの事業全体、まちづくりプロジェクトのことは「トダピース」と名づけていまして、「ハコを活かし コトをおこし ヒトをつなぎ トダを育む」をコンセプトに、空き部屋とか空き家を個性的なハコに作り替えて、そのハコを使って面白いことを起こして、そこに集まる魅力的なヒトたちを繋げて、それらを見える化していく、そういった動きで地域と繋がるきっかけを作っています。

トダピースのメインテーマ(トダピースのHPより)


「ハコ」つまり物件について、改修しているのは主に古くなったアパートの空き部屋です。古いアパートは、収益性が見込めない、改修にもお金をかけたくない、ということで放っておかれて値下げ合戦になり、まちの中に取り残される傾向にあります。私達は、これまでの「お金をかけて古いものを新しくする」というだけの画一的なリノベーションではなく、オーナーさんの資産状況や建物の劣化状況に合わせて、一部屋ごとに個別にアドバイスを行いながら少しずつ改修実績を増やしていきました。

改修では、CHArさんの作った、賃貸物件改修のデザインツール「モクチンレシピ」を使っています。


以前再建築不可の平屋を改修したこともありました。古くてきれいではないうえ、接道がないという、好印象とは言いづらい物件でした。そこをモクチンレシピを使ってリノベーションすることに加え、改修だけだと大きく印象が変わりづらいため、若手アーティストさんのギャラリーとして展示を開催してもらう時期を設け、人を呼び込んでから賃貸募集を行うという取り組みを行いました。


ギャラリー企画を行って、人に知ってもらうきっかけを作った(トダピースWEBより)


他には、逆に駅正面、目抜き通りの事例もあります。戸田公園駅で最も人通りが多いのではないかと思われる交差点で、まちのたばこ屋として40年以上営業されていたお店がコロナの影響で閉まってしまいました。

その場所を普通に賃貸募集してしまうと、資金力がある店舗がポンと入って来ることになり、地域の小さな事業者さんたちは駅前にお店を出せないという状況でした。地元で頑張ってる事業者さんを誘致したい想いと、できるだけ多くの人が関わり代を持てるような店舗に入っていただきたいという想いがあり、自分の事業所の裏で頑張っていらっしゃるカフェの店主に想いを伝えたところ、一緒にやりましょうということでおにぎり屋さんが開業することになりました。入っていたタバコ屋さんからタバコの営業を引き継いでほしいという要望もあり、タバコの認可を自社で取って販売も行いながら、まちの案内をおこなうこともあります。

たばこやさんがおにぎり屋さんになった(河邉さんの資料より)



不動産屋の従来のやり方に囚われないで動いてみる

また別の場所、空き地の活用事例もご紹介します。
収益性と手離れの良さを優先すると、一般的にはコインパーキングになるだろう土地でしたが、もともと地域に根差した床屋さんがあった場所でもあり、国道沿いの良い立地でもあるので、何か他のことができないかと考えました。
「どなたか何かやりませんか?」とオーナーさんにお声がけをする形だと説得力が足りないので、自分で借り上げて、キッチンカーを持っている方をお誘いしました。空き地にキッチンカーを置いたら何が起こるだろう、という実験的な試みでもあったのですが、ありがたいことにお客さんが増え、周辺に賑わいが生まれました。
そんな取り組みをオーナーさんが面白がってくれて、次はヤドカリさんのトレーラハウスを設置しようという話に進みました。トレーラーハウスは一般的に建物が建てられない土地に設置することが多く、建物も建てられる土地に設置するという使い方はヤドカリさんも初めてのことだそうです。
この土地は周辺の多くが借地で、ゆくゆくは一体開発をしたいという地主さんの意向があり、このような活用にした背景がありました。その点で地主さんの希望も叶えつつ、自分たちの事業費としても悪くないやり方だったということもわかってきました。というのもトレーラーハウスは600万円程度で購入でき、数年内ですとそれほど価格が下がらす売却できる可能性もあるんですね。建物を建てたら壊すしかないですがその必要もないので、環境面経済面双方で、良い商品・良い活用だったと感じています。


物件の活用を考える過程も、トダの人々と共に考えようという試みもしています。
昨年から「勝手にTODAサミット」と名づけた集まりを始め、戸田で頑張ってる方達を集めてワークショップを行いました。扱ったのは駅前の古い物件活用について、戸田公園駅前最古の居酒屋とも言われていた居酒屋さんがコロナの影響で閉めてしまったその場所をどう使うかというテーマでした。
不動産屋の従来の流れだと、空き店舗が出たら募集をかけて申し込みがあれば決まっていくという順番になるわけですが、新しい活用方法について戸田に住む方の意見を募ってみたら面白いのではと考えて実施したイベントでした。たくさんの案が出まして、結果、スナックがなされることになりそうです。


集った人からたくさんの「あったらいいな」案が出た(河邉さんの資料より)



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いかがでしたでしょうか。物件の使い方について、広さや築年数だけ見てリフォームをするのとは真逆の「どんな場所になったら戸田のまちや戸田に住む人にとって楽しいか」を考えて決めている様子に、これは大手チェーン店にはなかなかできない、戸田に詳しく愛を持つトダ暮らし不動産だからできることだと感じました。細かな工夫を重ねていくことには時間もかかりますが、それでまちがにぎわったり場所の価値があがったりして、ビジネスとしても成果を生んでいることがさすがです。

後編では、更に広義のまちづくり企画や、屋号変更の意図、これから注力したい取り組みについてご紹介します。

このようなワクワクする取り組みを仕掛けている不動産会社が集う、「パートナーズ」に関心がある方はこちらからお問い合わせください。

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