CHArが主催する、年に一度の不動産会社向けイベント「パートナーズNEXT」。2回目となる今年は、 〜地域価値を創る不動産会社「まちなかデベロッパー」を目指せ!〜というテーマで、6月14・15日に開催しました。パートナーズ会員にも、「まちなかデベロッパー」としてのプロジェクト事例をプレゼンテーションいただきました。
本記事ではそのなかで、株式会社ものくり商事 稲葉友香氏に発表いただいた内容をご紹介します。コンペ形式で入居者を募集するという取り組みはとてもユニークで、オーナーもまちも明るくする仕掛けを様々されてきたことがよくわかりました。
今回は稲葉さんの言葉でお届けします。
ものくり商事の概要
ものくり商事は、埼玉県さいたま市浦和区を拠点に不動産事業を展開している会社です。ひとりひとりが専門性を武器に恩送りを実践することを社是にしています。不動産の売買仲介、賃貸管理、設計、利活用の4つの事業を柱としつつ、いえまちくらしのパートナーとして地域の人が豊かな心で穏やかに暮らせる、そんな暮らしをサポートするには、一般的な不動産事業だけでは難しい部分もあり、コミュニティの場づくりとしてレンタルスペースの運営やキッチンカーの活用なども積極的に行っています。
私(以下稲葉さんのこと)は地域活性やまちづくりに関心があり、4年前にものくり商事に入社しました。今の自身のテーマは、「不動産を活用してオーナーさんと地域の課題の解決すること、豊かな暮らしをつくっていくこと」です。
ものくり商事とCHArとの事例では、10年空き家だった店舗をモクチンレシピを使って改修・地域が繋がる場としてオープンしたONVO LABO YONO(オンヴォラボ与野)などがありますが、今回は「チャリン」というサービスについて発表します。
チャリンの取り組みを紹介するものくり商事の稲葉さん。小学生2人の母でもある。
「三方よし」を目指す「チャリン」サービス
「チャリン」は、「空きスペースを価値の生み出す場所に変えるサービス」です。オーナーが無理なくコツコツ収益を得ることができるだけでなく、人々が集う賑わいを創出するなど、賃料だけではない価値創造を目指しています。
背景にあったのは、人口減少やコロナなどで人々の生活スタイルが変わる中で、今の暮らしに合わない大きすぎる店舗や家の維持管理の負担や、古い物件をどうしたら良いかわからないといったオーナーさんの悩みでした。
一方で浦和の駅前では再開発が進んで賃料が上がり、個人が新しいことを始める場所がなくなっている状況でもありました。商店街の中にはシャッター店舗がいくつもある中で、そこをチャレンジしたいまちのひとに循環させていけないかとサービスをたちあげました。
オーナーの想いを組んで考えた、コンペ形式でのテナント募集
チャリンとして最初の案件は、浦和の商店街にある「長堀米穀店」の空きスペースを活用するプロジェクトでした。オーナーの長堀さんは長年米穀店を運営されてきましたが、時代の変化と共に使わなくなったスペースがありました。「若い人たちのチャレンジの場をつくりたい」「ふたたび地域に賑わいをつくりたい」という想いを持った長堀さんから相談をいただき、プロジェクトが始まりました。
活用の方法を考えるため、長堀さんとものくりのメンバーで何回も議論を重ねました。当初は空きスペースをシェアキッチンのように大きく改修して使い手を募集するという案もありましたが、「チャレンジを応援したい」という長堀さんの気持ちを考えると、改修をオーナーで行うのではなく、入居者がやりたいように動けるよう応援する、という方向で考えるのがよいのではないかということになりました。
初期の改修は最低限にし、その代わり賃料を月5万円という、この地域では考えられないような破格の金額に設定しました。加えて、入居者はコンペ形式で選び、入居が決まった方には設備工事を100万円相当補助することも決めました。
コンペの概要
▼ 関連記事
▼ 最新記事