特集イベントレポート
2023.09.28 
プロジェクトレポート 佐賀市現地見学ツアー

6月6日と7日の2日間、CHArパートナーズ会員「やまの湯」の山野和哉さんと、佐賀のリノベーションまちづくりの視察に行って参りました。

やまの湯さんは、水戸市笠原にある温浴施設を核として、フットサルやテニスコートなどのスポーツ施設、飲食や事務所などの店舗物件、賃貸住宅運営など、幅広く不動産業を行う地域密着型の会社です。モクチンレシピを使った部屋の改修もさることながら、かねてより複数の物件のシナジー効果を生み出す中長期的なエリアビジョン策定を模索しており、パートナーズに加盟した経緯があります。

水戸市に拠点をもつ温浴施設運営の山野さんが、なぜ佐賀に興味をもったのかというと、「わいわい!!コンテナ」という、佐賀市中心部にある駐車場を活用したエリア再生プロジェクトと、今後パートナーズで実行していくアクションの親和性が高かったことが挙げられます。

「わいわい!!コンテナ」について、参考資料では早い段階から紹介していましたが、プロジェクトの発起人とCHArのメンバーが元々つながりがあり、「当事者から話を聞くことができると有難い」という山野さんの希望を伺いながら、現地ツアーを実施することにしました。


「わいわい!!コンテナ」は、まちづくり会社「株式会社ワークビジョンズ」が主導したプロジェクトで、2011年6月から2012年1月の社会実験を経て、2012年6月から「わいわい!!コンテナ2」として、商店街の一角にある駐車場を、原っぱとコンテナでできた「誰もが無料で自由に楽しむことができる『空き地リビング』」にリノベーションするというもの。



 

テーマは「街なか居住」。車が入れないようにして、殺風景な駐車場を原っぱに変えたら、子どもたちやお母さんが安心して過ごすことができ、そうした場を創ることで原っぱに面している空き店舗には、飲食や雑貨店を開きたいという人が出てくるのでは。という仮説のもと、半径約200m位のスモールエリアをベースにプロジェクトを始めました。 



山野さんが拠点とする水戸市の笠原エリアも、近年急激に宅地化が進み、ショッピングモールや大型量販店の出店なども相次いで、一見すると便利な地域になりましたが、かつて豊だった自然や、顔が見えるコミュニケーションを取る場が少ないという課題があります。

さらに、やまの湯の一部施設(サウナ)もコンテナを使って増設するなど、コンテナ本体の活用についても山野さんの関心が高かったことから、具体的な施工方法もとても参考になりました。




現地でアテンド頂いたのは、ワークビジョンズ・プロジェクトマネジャーであり、呉服元町ストリートマーケット代表をしている田村柚香里さん。

当初から視察の目標にしていた「わいわい!!コンテナ2」はもちろん、元呉服店だった商業ビルを丸ごとリノベーションした「ON THE ROOF」など、呉服元町の様々なエリア再生事例を丁寧にレクチャーして頂きました。 




2020年にオープンしたベーグル屋さん「MOMs'Bagel」は、ハンドメイドの雑貨店と併設した長屋的なデザインを取り入れつつ、元々駐車場だったスペースを活用し、新築として建てられました。今ではすっかり地域の若い女性やママさんたちの憩いの場所になっており、スモールエリアに重点的にリソースを集中させ、小さな経済圏を作っていることが体現されています。

 

その一方で、せっかく新しい店がオープンしたと喜んだのも束の間、すぐ別の店が無くなってしまうという構図は、佐賀も他の地方都市と同様で、建てておしまいではなく、次の世代に向けて、土地を耕し、種をまき、小さい芽を育て続けることが肝なのだと、改めて感じさせられました。


  


この現地ツアーを通じて、最も印象に残ったのが、三人でディスカッションをしているときに、田村さんが発した「山野さんは『マイクロデベロッパー』なんですよ」という言葉です。

マイクロデベロッパーとは、大きな開発ではなくリノベーションによって、まちに小さな点を打ち、点から面へエリアの魅力を広げていく事業者のことを指します。

これまではお風呂屋さんとして、自他共に認識をしていましたが、このツアーは次のステージへと進む大きな転機となりました。

エリアは違えどビジョンは同じ。スモールエリアに将来への新たな希望となる小さな点を打っていきたいと思います。
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