築52年の川崎に建つ木造家屋の改修である。再開発によって近代的なビルやショッピングセンターが駅前を彩る川崎も、一歩路地裏に入り込めば木造密集の風景が広がっている。プロジェクトは、モクチン企画のパートナーである地元の不動産管理会社による資産運用コンサルティングの一環として実施された。相続、借地権、現行法規などの制度的枠組みが障害となりうまく活用できずにいた既存物件を再収益化することがプロジェクトの目的である。限れた予算のなか、耐震計画をたて、平面計画を整理しながらモクチンレシピを組み合わせることで改修案を決定していった。下屋部分を減築し、残った基礎部分を利用してデッキをつくることで隣家との距離が近い敷地のなかで光と風が入り込むような隙間空間をつくった(減築デッキ)。また内部は、水回りなどの機能性が求められる空間を大壁仕様にし、そこに耐震壁を集中的に設け、残された居室部分は真壁の味わいを活かした最小限の操作におさえることで、仕上げとコストを真壁と大壁ぶぶんで対比的にした(メリハリ真壁大壁)。(新建築2014年8月号掲載テキスト)