特集トダピースが考える「価値を生みつづける賃貸ってなんだ!?」
2020.02.20 
第3回:エリアの価値を上げていくことを仕掛けましょう

埼玉県の戸田市にある、ちいさなまちの不動産屋の2代目、平和建設㈱河邉政明と申します。古くなった物件をモクチンレシピで改修し、建物も住まう人も変わっていく奇跡を見せてくれたモクチン企画が「30年先を見据えた賃貸物件をつくったらどんなものが出来るんだろう?」という妄想をカタチにしていくまでの「カクカクシカジカ」をお話させて頂いております。前回(第2回)の記事では、「不動産屋」と「入居者」がシェアする場所をつくりましょう、というトンデモ提案がきましたが、果たしてこのプロジェクト、どうなるのでしょう....。


地域(エリア)の価値を上げていくようなことを仕掛けましょう



さて、モクチン企画さんからの新築アパートの提案は


(1) アトリエアクセスの長屋3世帯+シェアスペース(1F工房スペース+2F住居)

(2) シェアスペースは入居者と不動産屋(つまりワタシたち)でシェア

(3) 入居者と自分たちがかかわるスペース(余白)を残しておく


というもの。


これまでの賃貸住宅といえば「プライバシー」や「セキュリティ」といった部分が重要視され、どんどんと個別に断絶してく傾向にあり、境界をはっきりさせることが良しとされてきました。


近年では大家と借主との関係性をも断絶する「サブリース」といった制度が主流となり、「手離れの良いアパート経営」こそが価値ある賃貸、大家業の王道となりつつあります。「トラブルなく手間ヒマかけずに稼ぐ。」といったセールストークですね(苦笑)。


ただ今回のプロジェクトは今の時代のアパート経営とは全く逆行した、大家や不動産屋が顔を見せてコミュニケーションを図ることで、地域(エリア)の価値を見せていこうというもの。


とはいえ、20年以上不動産屋をやってきた中でそんな取り組み見たことないし、やったこともない。(汗)


「百聞は一見にしかず、行ってみなくちゃわからない!」とばかりに、とりあえずエリアの価値を上げる「ハコ」や「取り組み」を行っている物件を見に行くことにしました。



入居者と不動産屋の関係を紡ぐ食堂


まずは皆さまご存知「トーコーキッチン」。ここはモクチン企画さんのパートナーでもある東郊住宅社の池田さんによるプロジェクト(モクチン企画さんが内装デザインをやっています)。


不動産屋が「入居者のための食堂」をつくり、利益度外視で朝食100円、昼食・夕食500円で提供するという取り組み。


「トーコーキッチン徒歩〇分」という検索ワードが出来るほどの人気ぶりで、通りの人の流れを変え、淵野辺エリア全体の価値を向上させたスーパースター。


池田峰社長の「ひととなり」がそのままカタチになったような空間で「居心地良い!」の一言。


ウチのムスメが一人暮らしをするなら絶対「東郊住宅社」の管理物件に住ませたいと思うくらい。(笑)


賃貸管理の業界は入居者の声(クレーム)が少ないほど良いとされ、これまで更新時しか顔を合わせなかった「入居者」と「不動産業者」との関係性を覆し、常にコミュニケーションが取れるようなしかけつくりはまさに目からウロコ。


やっていることがスゴすぎてマネするなんて恐れ多いのですが、エリアにくさびを打ち込んだ強烈な事例でした。


トーコーキッチンが紹介されている記事:https://suumo.jp/journal/2017/01/25/126455/




スーパーオーナーが実現した最先端の賃貸

続いて(未来の)大家の学校校長「青木純」さんの「青豆ハウス」。

入居者の皆さんに笑顔で出迎えて頂き、ここに住まう人たちが自慢気に物件の良さを語ってくれるという、長年不動産屋をやってきたにもかかわらずほとんど味わったことのない感覚。

同じ価値観を持った人たちが集まり、お互いに快適な関係性が長く持続しているからこそ味わえるアットホームな空気感は「大家と店子」という関係性を超越していて、ここが賃貸物件だという事を忘れてしまうくらい…

「築年数」とか「床面積」とか「最寄り駅」とか「徒歩〇分」とか「賃料相場」とかそういったモノサシには一切当てはまらない唯一無二の空間は、いまの賃貸物件のポータルサイトでは絶対に検索出来ない計り知れない魅力がたくさん詰まった場所でした。

青豆ハウスについてはこちら:https://mamekurashi.com/aomamehouse/





ナリワイが風景となったアパート

そして最後は東京都練馬区にある、今話題の「欅の音terrace」。

「ナリワイ×暮らし」をキーコンセプトとして、築38年の鉄骨造2階建てアパートを職住一体型の賃貸集合住宅へとリノベーションしたもの。

店舗+住居一体の集合住宅ということで、当然にぎやかな場所にある建物であろうと勝手に想像しながらナビを頼りに現場に向かったトコロ…そこはまさに閑静な住宅街(汗)

 仮にワタクシが相談を受けていたら絶対「店舗+住居」一体の提案は行わないであろうロケーションにもかかわらず「デザイン力+企画力+提案力」により、多くの人が集まるにぎやかな光景を見せて頂き、場所を言い訳にせずともにぎわいはつくれるという実例を見せて頂きました。

写真は第4回ナリ間ルシェの様子です。





人と人の関係がエリアの価値をつくる!?

そして、その他「喫茶ランドリー」やモクチン企画の連さんと川瀬さんがメンバーでもある@カマタが運営する梅屋敷駅の「KOCA(コーカ)」等々みてきました。

建物によってエリアを変えた実例を見学してきて感じたのが、どの物件も建物(ハード)だけの力で価値向上を図っているのではなく、むしろ人との関係性(ソフト)でエリアの価値を向上しているということ…

あれ?これってもしかして??


 (第四回へつづく)
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