埼玉県の戸田市にある、ちいさなまちの不動産屋の2代目、平和建設㈱河邉政明と申します。古くなった物件をモクチンレシピで改修し、建物も住まう人も変わっていく奇跡を見せてくれたモクチン企画が「30年先を見据えた賃貸物件をつくったらどんなものが出来るんだろう?」という妄想をカタチにしていくまでの「カクカクシカジカ」をお話させて頂いております。前回(第2回)の記事では、「不動産屋」と「入居者」がシェアする場所をつくりましょう、というトンデモ提案がきましたが、果たしてこのプロジェクト、どうなるのでしょう....。
地域(エリア)の価値を上げていくようなことを仕掛けましょう
さて、モクチン企画さんからの新築アパートの提案は
(1) アトリエアクセスの長屋3世帯+シェアスペース(1F工房スペース+2F住居)
(2) シェアスペースは入居者と不動産屋(つまりワタシたち)でシェア
(3) 入居者と自分たちがかかわるスペース(余白)を残しておく
というもの。
これまでの賃貸住宅といえば「プライバシー」や「セキュリティ」といった部分が重要視され、どんどんと個別に断絶してく傾向にあり、境界をはっきりさせることが良しとされてきました。
近年では大家と借主との関係性をも断絶する「サブリース」といった制度が主流となり、「手離れの良いアパート経営」こそが価値ある賃貸、大家業の王道となりつつあります。「トラブルなく手間ヒマかけずに稼ぐ。」といったセールストークですね(苦笑)。
ただ今回のプロジェクトは今の時代のアパート経営とは全く逆行した、大家や不動産屋が顔を見せてコミュニケーションを図ることで、地域(エリア)の価値を見せていこうというもの。
とはいえ、20年以上不動産屋をやってきた中でそんな取り組み見たことないし、やったこともない。(汗)
「百聞は一見にしかず、行ってみなくちゃわからない!」とばかりに、とりあえずエリアの価値を上げる「ハコ」や「取り組み」を行っている物件を見に行くことにしました。
入居者と不動産屋の関係を紡ぐ食堂
まずは皆さまご存知「トーコーキッチン」。ここはモクチン企画さんのパートナーでもある東郊住宅社の池田さんによるプロジェクト(モクチン企画さんが内装デザインをやっています)。
不動産屋が「入居者のための食堂」をつくり、利益度外視で朝食100円、昼食・夕食500円で提供するという取り組み。
「トーコーキッチン徒歩〇分」という検索ワードが出来るほどの人気ぶりで、通りの人の流れを変え、淵野辺エリア全体の価値を向上させたスーパースター。
池田峰社長の「ひととなり」がそのままカタチになったような空間で「居心地良い!」の一言。
ウチのムスメが一人暮らしをするなら絶対「東郊住宅社」の管理物件に住ませたいと思うくらい。(笑)
賃貸管理の業界は入居者の声(クレーム)が少ないほど良いとされ、これまで更新時しか顔を合わせなかった「入居者」と「不動産業者」との関係性を覆し、常にコミュニケーションが取れるようなしかけつくりはまさに目からウロコ。
やっていることがスゴすぎてマネするなんて恐れ多いのですが、エリアにくさびを打ち込んだ強烈な事例でした。
トーコーキッチンが紹介されている記事:https://suumo.jp/journal/2017/01/25/126455/
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