木造アパートの耐震補強、気になりますよね。とはいえ耐震補強には多くの予算が必要です。どのように改修を行うか、そもそもどうして行うのか。耐震補強を検討する際に知っておきたいあれこれをご紹介します。
築年数の古い木造アパートでよく話題にあがる耐震補強。しかし一概に古いといっても、どのくらい古いと気をつけなければいけないのでしょうか?
1981年(昭和56年)5月30日に建築基準法が改正され、いわゆる「新耐震基準」が適用され始めました。
大きな違いとしては、
旧耐震基準 ・・・ 震度5の地震で倒壊しない
新耐震基準 ・・・ 震度6,7の地震で倒壊しない
という強度設定があります。
基本的にはこの新耐震基準の適用以前の建物が、耐震補強を検討すべき古い建物、ということになります。
※日本の建築基準法は、初震で倒壊せず居住者の避難時間を確保することを目的としています。何度も続く余震や長年繰り返される地震に対して万全を保障するのは難しい、ということです。
一つ目のポイントは「基礎」です。
建物の足元を支える基礎は、目視で建物の状態を判断するバロメーターです。築年数の古い物件だと基礎に鉄筋が入っていないケースもありますので、大きなひび割れがないかをまずは確認してみましょう。
二つ目のポイントは「壁」です。
最もシンプルな構造設計方法に「壁量計算」があげられます。これは、建物の規模に対して必要な構造壁の分量(壁量)を計算し、筋交いや構造用合板で補強した壁をバランス良く配置していく設計方法です。
実際に耐震補強の工事をする際には、耐震基準が変わって増えた分の壁量の確保と、壁の配置バランスの見直しが主な内容になります。
三つ目のポイントは「屋根」です。
瓦屋根は重量があるため、建物構造への負担が大きくなります。また地震の際には、剥落による二次被害も懸念されます。壁の補強と合わせて、金属屋根など軽量な屋根に変更するのも効果的な耐震補強の一手です。
どの場合も、内容によっては確認申請を伴う可能性があります。独自に行っても問題のない工事内容かどうかの判断は、所轄行政の建築課に相談してみましょう。
壁について確認するのと合わせて、細かい箇所にも注意が必要です。例えば写真の物件は築50年を超えた戸建の木造物件ですが、梁を継ぐ「仕口」がしっかりと作られておらず、隙間が空いしまっています。
そもそも仕口は金物のない時代に生み出された大工さんの高等技術ですが、個々人の腕前に出来が左右されてしまうため、残念ながらしっかりと作られていないものも少なくありません。耐震壁のような大きな部分以外にも、こうした細かい修正箇所を見つけて、金属製の補強材(金物)で補強していく必要があります。
耐震補強のポイントが分かってきたら、専門家の意見も聞いてみましょう。近年は行政が木造物件の耐震改修・補強を推進しており、耐震診断を簡単に受けることが可能です。
http://www.kenchiku-bosai.or.jp/soudan/soudan.html
※日本建築防災協会HP 耐震診断・改修の相談窓口一覧
簡易的な診断であれば無料で行っている場合もあるので、まずはお住まいのエリアの検査機関を調べてみましょう。
耐震補強は確かに重要です。しかし教科書通りの耐震補強をするだけでは、補強材が部屋の中に出てしまったり、窓が小さくなってしまったりと、建物の魅力が損われてしまいがちです。大きな金額の工事になる以上、物件に合わせた工夫のある耐震補強ができるとベストです。たとえばモクチンレシピには、間取りと耐震壁をうまく組み合わせることで、構造的にも意匠的にも部屋をより良くする「くりぬき土間」などのアイデアを紹介しています。
モクチン企画では構造設計事務所の協力のもとで行う補強計画のご提案も行っています。お困りの方は「モクチン相談室」まで、是非一度ご相談ください!
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