LIXILビジネス情報に代表の連が参加した鼎談「今、空間・建築にできること/できないこと」掲載
LIXILビジネス情報に代表の連が参加した鼎談「今、空間・建築にできること/できないこと」が掲載されました。
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https://www.biz-lixil.com/column/urban_development/sh3_talk_002/
鼎談「今、空間・建築にできること/できないこと」より転載
空間や建築単体で社会を変えることは難しい
連勇太朗
本年度の「これからの社会、これからの住まい」では、現代社会の大きな変化のうねりに合わせ建築がどのように変わっていくのか、ということを議論しています。そのために、本鼎談を含めた個々の記事をつなぐツールとしてA/Bリストなるものもつくっています。私を含めた若い世代が何を考え、どのようなことをしようとしているのか。今は大きな建築的潮流が存在するわけではなく、むしろ個々の言説が断片化し漂っているような状況ですので、ここで生まれるさまざまなキーワードや概念も連携や連帯のきっかけになればよいなと思っています。今日の鼎談を通してA/Bリストがどのように更新されるのかもとても楽しみです。
さて、本日は建築家の金野千恵さん、上野有里紗さんと3人で、「今、空間・建築にできること/できないこと」について考えていきます。建築家のコミュニケーションやメディアのなかでは、いまだに空間や建築が変われば社会が変わる、という素朴な空間決定論・建築決定論的言説が根強く残っているように思います。学生のプロジェクトや講評会、建築家による作品解説や批評文、建築系のイベントや対談など、本人が意識しているか、していないかは別として、「空間・建築が変われば社会が変わる」という類の楽観的かつ状況を単純化した思考に陥ってしまっている建築家が意外と多いです。地域に向けて開かれた縁側や土間をつくってもそれで直接コミュニティが再生される、ということは社会の複雑性を考えたら基本的には成立しない図式なわけで、かといって何もできないのか? といったらそういうことではまったくなく、空間や建築でできることはたくさんある。
そういう観点から、鼎談を始めるにあたって以下のことを共有の認識にしてみたらどうかと思っています。まず、空間や建築物単体の力だけで社会課題解決や社会変革を達成することは限りなく難しいということ。社会課題自体が複雑化している現代のなかでは、つねに領域横断的かつ社会技術的アプローチが必要であり、そういう意味で、建築家の果たすことができる役割は限りなく広がっているが、それはできないことに対して自覚的であることが同時に求められます。「建築にできることはたくさんあるけど、できないこともたくさんある」という当たり前の認識を出発点にして議論できればと思います。